An Editor in columns コラムの中の編集者
ロシア文学を専門に出版している群像社の編集者がつづるエッセイ、日記、本の周辺をめぐる話から日々の雑感
この言葉の飛行距離は?
 日本独特の「私小説」を自己暴露の儀式ととらえた評論を読んで、なるほどと思ったことがあった。その本がすぐに手元に出てこないので正確な引用はできないのだけれど、「自己暴露の儀式」としての私小説がいかに近代日本の文化のなかで肯定的に受けとめられてきたか、それを著者のドイツ人女性が説得力をもって検証していたと記憶している。

 いま、その本のことを思い出したのは、ブログという最近の表現形態が、人によっては自分の秘め事を他人に見せているにすぎず、まさに「自己暴露」の横行にしか見えないらしいということを知ったからだ。他国の状況は知らないけれど、もし日本で増殖しているブログの内容がもっぱら自己暴露的であるとすれば、日本の近代以降続いてきた「私小説」の伝統はここにきて一気に「一億総私小説作家」にまで立ち至ったと見ることができるのかもしれない。

 もちろん、いまネット上にあるすべてのブログに目を通してその中身を断じることができるほどのツワモノが、